友人宅訪問2

 手土産を渡す場面を何度もシミュレーションしながら、予定の電車に間に合うように自宅を出ました。再度シミュレーションしながら歩いている時思い出してしまいました。
「ハンカチ忘れた」
手土産に夢中で、その後先方でお昼を食べるシチュエーションやトイレを借りるシチュエーションのシミュレーションが不足していました。
 先方でもキッチンにタオルくらい下がっていると思われますが、それを使って手を拭いていいものでしょうか。図々しいと思われないでしょうか。
 しかし忘れたものは仕方ありません。取りに帰っていると予定の電車に間に合いません。最近生活がうまくいっているからといって油断していました。訪問の鬼門は手土産だけではないのです。ここであわてては他のことまでめちゃめちゃになってしまいます。気持ちを切り替えることが大切です。
 もう1つ鬼門はあります。遅くとも4時までには帰りたいということです。お昼からお邪魔してそれ以上は私の神経が持たないというのもありますが、大みそかなので夜は緊張から解放され、心静かに過ごしたいというのもあります。
「あ、もうこんな時間、帰らなくては」
「まだいいじゃないの」
こんな恐ろしい会話が予想されます。先方は本気で引き止めている訳ではないと思いますが、ちゃんとシミュレーションしておかないと私は自分の言葉が否定されたことにパニック起こし、さらに相手に否定されたとしてもこちらは相手の言葉を否定してはいけないというルールに支配され、帰れなくなってしまいます。定型発達者は否定し合うのが礼儀です。否定されたら否定し返さなければなりません。
 緊張感漂う中、電車は駅に着き、いよいよ待ち合わせです。難しい資格講座同級生の通称無職が迎えに来てくれました。車で自宅まで連れて行ってくれ、お母様と対面しました。シミュレーション通り手土産を渡すことができました。
 一緒にお昼を食べることになったのですが、友人もお母様も落ち着かなくて、お茶を入れたり果物を切ったりと忙しそうなのに、私はぽつねんと座っているばかりでした。
「どうぞ召し上がって」
と言われたら召し上がらないといけないと思い込む私は出されたものを言われるままに平らげてしまいました。お腹がパンパンで気持ち悪いです。ここは次回の反省点で、断り方などをシミュレーションしておく必要がありました。
 もっと困ったのはシャンパンを勧められたことです。私は禁酒しているのですが断り方をシミュレーションしていなかったので、言われるままに飲まざるを得ませんでした。
「とっといても気が抜けてもったいないから全部飲んじゃって」
と言われ、仕方なく1本空けてしまいました。大みそかの夜は年越しそばでも食べながら心静かに迎えたかったのに、お腹パンパンの上酔っ払ってめちゃめちゃです。
 こう書くとそれはあなたが悪いのではないでしょうかと言われそうですが、断るという行為は一歩間違うと大変失礼な言い方になります。表情をうまく作れないと
「いらないって言っているだろ聞こえないのかコノヤロー」
みたいな雰囲気になります。否定し合う会話ルールに慣れている人には何でもないかも知れませんが、否定するのは悪という意識が固まり過ぎています。
「もうこんな時間、そろそろ帰らなくては」
の方はシミュレーションしていたので成功しました。とりあえずシミュレーションしていたことは成功し、していなかったことは失敗しました。当たり前の結果ですね。
 今後のために訪問時のシミュレーションメモ。

  1. 手土産を用意し渡す
  2. 食事、お菓子の勧めを断る
  3. 酒の勧めを断る
  4. あらかじめ決めた時間に帰る

 
 そんな感じで反省の大みそかとなりましたが、勉強になりました。皆様よいお年を。