セーフティネット

YOMIURI ONLINE「持病の薬飲み忘れた」6人死亡事故の運転手

 小学生6人を死亡させたクレーン車の運転手がてんかんの持病を持っていて当日薬を飲み忘れていたことが話題となっています。様々なブログでのご意見はおおむねこんな感じです。

  1. やったことは許されないけどてんかんに対する差別につながらないか心配だ。
  2. この犯人はクレーン車を運転すべきではなかったが、就職難の昨今、持病を隠して就職せざるを得ず、そうなると健常者と同じようにすることが要求される。

 私も薬を飲みながら働く身で、他人事ではありません。私は幸い、仕事の性質上、万一薬を飲み忘れても職場でパニクってトラブルを起こし、人格と業務遂行能力を疑われるくらいで、他人の命を奪うことまではないと思います。
 私の母は私に
「お前は自動車の免許を取ってはいけない、人の命を預かる仕事をしてはいけない」
と教えてきました。それは大変正しい教えで、今となっては感謝しています。
 この話題は多くの重要な問題を含んでいます。1つは、薬を飲んでいれば普通の生活ができるとはいえ、人間はミスをする生き物だから、薬を飲み忘れた時のセーフティーネットを用意しておかなければならない、ということです。
 会社の仕事だと重要なことは複数人でダブルチェック、トリプルチェックをするという体制が取れますが、1人暮らしだとそれができません。チェックリストをつける、朝の薬は前の晩のうちにセットしておく、朝晩の動作の中に薬置場を何度も見るよう義務づける、バッグの中に薬を用意しておいて通勤途中や会社でも飲めるようにしておくなど最大限の工夫は必要ですが「万一」をゼロにすることはできません。そういう意味ではこの犯人は、自動車を運転するような仕事に就くべきではなかったのでしょう。
 てんかん精神障害者に含まれるそうですが、精神障害者精神障害者というだけで、同じことを健常者がした場合よりも厳しい目で見られます。一時飲酒運転による事故が大問題になりましたが、それでも飲酒者に対する差別問題は発生しませんでした。まして自動車に対する反対運動が起こるということもありませんでした。
 私もすっかり朝晩の動作に薬を飲むことが定着してしまっていましたが、飲み忘れというリスクを常に抱えていることにぞっとしてしまいました。