犯罪心理学入門

犯罪心理学入門 (中公新書 (666))

犯罪心理学入門 (中公新書 (666))

琥珀色の戯言様生活保護が危ない」より

長崎市では、市職員が生活保護の相談に来た男に逆上され刺殺される事件が起きている。

 こんな事例を知っては、ケースワーカーではない私も震え上がってしまいます。通常事件報道を見ると、殺人の被害者は何にも所属しない人として扱われているからです。ある特定の職業についていることで被害者となったという事例は、より殺人を身近なものにしています。
 被害者の所属する集が多くの場合被害とは無関係とされるのと同様、加害者の所属する集も本来犯罪の主たる要因ではありません。しかし大きな犯罪を犯した人は
「大きな犯罪を犯した人」
という集にも属しています。そこには何の共通点もないのでしょうか。
 共通点の洗い出し→新たな集の形成→その集に対する差別
となるのは危険です。
 ただ、殺人のような重い犯罪を実行できる人は何らかの異質な存在であると考えた方が、人は精神の安定を得られます。これは私の中の差別心でもありますが、異質の正体は私自身が所属する集かも知れないという恐怖もあります。それらと向き合うためにも、
「何らかの異質な存在」
の姿を突き止めたいです。この異質な存在を包括する集を求めると、残念ながら精神疾患の世界に目を向けることになります。
 過去記事「精神障害の罪と罰」の中で
「異常だから犯罪を犯すのでなく、犯罪を犯す人には何らかの異常がある」
と書きました。この考えは今も変わっていません。
 冒頭紹介の書籍はこの分野では古典で、1982年発行です。まだ発達障害は取り上げられていません。統合失調症の表記も精神分裂病のままです。
 近年になって書かれた類似の書籍もありますが、必ずアスペルガー症候群が扱われています。まだここにまっすぐ向き合うには私の覚悟ができていないため、古い方を手に取りました。(続く)