天使の仮面

 入院前の最終出勤日、お見舞いをもらった私の顔はひきつっていたでしょう。その瞬間からお返しのことを考えなければなりません。
 今の会社では、派遣時代にはなかった社交辞令に接する場面にいくつか出会いました。
「気持ちだから」
「お返しとかそういうんじゃないから」
「本当にうれしかったの」
「気を使わせて、かえって悪いことしたね」
そんな優しそうな顔でそんな風に言われると、本気にしてしまうではありませんか。
 それは嘘です。本当ではありません。信じてはいけません。この人達はその顔の、その言葉の裏で、人に物をもらってお返ししない人間は非常識、とか考えているのです。
 知識としては知っていても、AS診断されて5年経った今も、まだ慣れません。社交辞令。