精神障害の罪と罰4

精神障害者をどう裁くか (光文社新書)

精神障害者をどう裁くか (光文社新書)

 
 シリーズ最終回にあたって、その中心となった次の法律の条文を引用します。
 
刑法三九条
一 心神喪失者の行為は罰しない。
二 心神耗弱者の行為はその刑を軽減する。
 
 どんな複雑な法律で規定されているのかと思ったら、触法精神障害者の刑罰に関することはこの2行です。どうとでも解釈できます。実際、時代によって運用は変わっているようで、現在では凶悪犯の場合世論の影響もあってほとんど適用できないようです。
 問題が複雑になっているのは、遺族、司法、医療それぞれの立場からのそれぞれに正しい考えがあるからです。参考文献の著者が医師であるため、読んでいると医療に考えが偏ってしまいますが、それは必ずしも万人にとって正しくないのでしょう。ただ
「司法と医療がもっと連携するべき」
という主張は賛同を得られると思います。
 この本は裁判員制度導入の直前に書かれていますが、それに関しても触れられています。裁判員の多くは司法よりも医療よりも遺族に近い立ち位置です。個々の精神障害について裁判員が理解した上で裁くことができるのか、アスペルガー症候群の被告の裁判の報道を見ると不安を覚えます。
 統合失調症においても、被害感情は十分考慮されるという前提ですが、
「本人の世界観の中では自分の身を守るためのやむを得ない行動だった」
と理解されるでしょうか。
 こう書くと私が三九条に賛成みたいですが、どちらかというと反対の立場です。しかし、被告が健常者でも、個々の事例において情状酌量が適用されるのと同様、検討は許されるべきです。
 
精神障害の罪と罰1触法精神障害者
精神障害の罪と罰2統合失調症
精神障害の罪と罰3アスペルガー症候群