精神障害の罪と罰3

精神障害者をどう裁くか (光文社新書)

精神障害者をどう裁くか (光文社新書)

 
 本書にはアスペルガー障害(症候群)の例も登場します。1999年に起こったハイジャック事件の犯人です。
 航空マニアの犯人は、空港警備の不備を発見し、警告文を送ると共に、自ら警備員になることを希望し断られ、自分の正しさを証明するために、その不備をついてハイジャックを決行したというのです。気持ちはわからんでもありませんが、いくら何でもそんなことしません。
 ASが根底にあるとしたら、人の言葉を発話者の意図と逆に取ったり、文字通り解釈しすぎて違う常識が形成されていることがある、くらいでしょうか。
 私はASを理由に減刑すべきでない、普通に裁くべきと考えていました。それが揺らいだのは、下記の事件報道を読んだ時です。
 
 asahi.com 「被告の障害どう判断 病気の妻放置致死事件
 
 保護責任者遺棄致死。何かしたからではなく、何もしなかったことが罪になる犯罪です。酔っ払いを放置しても適用になることがあるそうで、私のような気の利かない者にとっては恐ろしい法律です。
 ASを理由に減刑して欲しくない、その焦燥にも似た思いは、差別につながることを私が恐れているからです。減刑対象であることが人の心に差別感覚を発生させることを私は知っています。それは、減刑対象となる精神障害者の方も同じなのかも知れません。
 
 著者は結論を避けています。私は、「何かした」犯罪に対しては、発達障害を理由に減刑はすべきでないと考えます。「何もしなかった」方に対しては、結論を避けたいです。自分が犯人になったら困るからという自己中心的な理由からです。