続カラマーゾフの兄弟

『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する (光文社新書)

『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する (光文社新書)

 普通に面白いという表現をたまに見かけますが、そのニュアンスには
「期待したよりも面白かった」
「すごく面白い訳ではないけれどまあまあ」
という意味もありますが
「自分は面白かったけど他の人にとっても面白いかどうかわからない」
という責任逃れワード的な意味が含まれているのではないかと想像します。
 そういう意味ではこの
「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」
は普通に面白かったです。
 
 この書籍は「空想する」という表現が示すように、残されたわずかな材料、時代背景、作者ドストエフスキーの思想等を元に第二の小説のストーリーを追っていく内容です。
 論理的な組み立てと大胆な推理はミステリーの謎解きのようで、前半はワクワクさせられます。
 しかし出来上がったストーリーがすごく面白いかというとそうでもありません。あくまで粗筋であって、小説の体裁を取っていないからです。
 小説として書き起こしたら二次創作になります。様々な大人の事情から、商業出版としては無理でしょう。登場人物も本編に出て来た人ばかりで、実際にはもっと魅力的な新キャラが考えられるであろうに、筆者の遠慮が見え隠れします。
 空想の構築は楽しいものですが、読者は決してこの小説を読むことができないと、思い知らされたのでした。